親指がボロボロ

日常で思ったことを書いていく雑記ブログ

ちょっとしたホラーだった

今読んでいる小説で、頭の中に残り続けているセリフがある。

『2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件の日に自分が何をしていたかを当時それなりの年齢だった人はかなりの確率で覚えている。その日は特別な日で、その日のことを思い出す人が多いからだ。しかし、2001年9月10日に自分が何をしていたか覚えている人はほとんどいない』

大体このようなセリフだ。

確かにあの日に自分が何をしていて、どこにいたかを覚えている。自分がどんな格好をしていたかも覚えている。テレビに映し出されているものが全く信じられなかったあのときの感情を今でも思い出すことが出来る。ちなみにこのように重大事件によって当時のことを鮮明に覚えていることをフラッシュバルブ記憶と呼ぶ。

そして2001年9月10日に自分が何をしていたかは全く覚えていない。もしかしたら2001年9月10日かもしれない、という記憶はあるが全く自信がないし、すりガラスを何枚も隔てているかのようにおぼろげだ。

そしてこの台詞のあとに『個人の人生はフラッシュバルブで出来ている』というような台詞が続く。

この台詞を読んだ後、不安感に襲われた。今の自分を作っている土台が急にスカスカになったように感じられたのだ。今まで一日一日であった小さな事が少しずつ自分に影響を与え、今の自分ができていると思っていた。しかし、この小説では実際は過去にいくつかあった身の回りの事件の記憶だけ、つまりいくつかのハイライトシーンでできていると言っているのだ。

しかし、実際は半分正解くらいではないだろうか。確かにそういったものが今の自分の大部分を占めているのは間違いないだろう。だが、今となっては全く思い出すことのできない小さな事件や小さな決断、そういったものがハイライトシーンという大きな塊のつなぎになって今の自分ができているのではないだろうか。というか、そうだと信じたい。

 

ちなみに今読んでいる小説のタイトルは『ゲームの王国』だ。日本の小説では珍しく舞台がカンボジアだったり、登場人物が皆個性的...というか変だったりして読んでいてなんだか新鮮な気持ちになってくる。オススメだ。